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研究室だより Vol.34 杉山研究室

【機能デザイン領域 杉山 和靖 教授】

気体と液体を混ぜる回転ローターのエネルギー損失メカニズムを解明
-動力伝達装置、攪拌機などの効率向上に資する設計指針を提供-

・回転ローターによって気体と液体が混ざった流れを動かしている状態(気液二相流)において、エネルギー損失(※1)が最大化するメカニズムを、実験とスーパーコンピュータによる数値シミュレーション(※2)との融合により解明

・損失最大化は、界面波の共振(※3)に関係し、ローターと気液界面の直接的な衝突に加え、ローター周囲に生じる特異な高圧・低圧領域の圧力変動が大きく影響していることを特定

・動力伝達装置、攪拌機などの産業機器におけるエネルギー損失の低減と最適な設計・運転に資する基礎的知見を提供し、産業機器のさらなる省エネ化や性能向上の実現に期待

大阪大学大学院基礎工学研究科 河村真佑さん(博士後期課程)、杉山和靖教授(理化学研究所光量子工学研究センター 客員研究員兼任)、東京大学大学院工学系研究科 渡村友昭講師(理化学研究所光量子工学研究センター 客員研究員兼任)の研究グループは、動力伝達装置、冷却システム、化学攪拌機など、様々な産業分野で使われる「ローター駆動型気液二相流」におけるエネルギー損失メカニズムを詳細に解明しました。

本研究では、エネルギー損失が局所的なピークを示す現象(損失最大化)(図)に焦点を当て、実験とスーパーコンピュータ「SQUID」(※4)や「HOKUSAI BigWaterfall2」(※5)を活用した数値シミュレーションを組み合わせてその詳細を解析しました。

研究の結果、損失最大化をもたらすトルク(※6)の最大化は、ローターと液面の衝突だけでなく、一周期ごとに複数回発生するローター前後の圧力の偏りが顕著になることが原因であることを突き止めました。

さらに、液体の充填率が高いほど、この損失最大化の効果が弱まることが明らかになり、回転速度だけでなく液面高さも考慮することでエネルギー損失を効果的に低減可能であることが示されました。

これらの知見は、複雑な産業機器における流体抵抗や攪拌損失(※7)の理解を根本から深めるもので、産業機器のさらなる省エネ化や性能向上の実現が期待されます。

本研究成果は、混相流れに関する専門学術誌である「Multiphase Science and Technology」に、2025年12月14日付で公開されました。

詳細は大阪大学ホームページ(ResOU)をご参照ください。

【用語説明】

(※1)エネルギー損失
流体を用いる機械・装置の多くは、流体の持つエネルギー(運動エネルギー、位置エネルギー、圧力によるエネルギー)を仕事や動力の源として利用します。流れに摩擦が生じると、流体の持つエネルギーの一部は熱エネルギーに転換され、機械や装置の動作に利用できなくなります。流体の運動や力を工学的に応用する流体工学の分野では、このエネルギーの転換分をエネルギー損失と呼びます。

(※2)数値シミュレーション
現象の法則を表す数式をコンピュータで計算し、その現象をコンピュータ上で再現することです。

(※3)共振
物体が持つ揺れやすい振動数(固有振動数)と同じ振動数で外部から力を加えたときに、その物体の揺れが著しく大きくなる現象。流体が共振すると、その振動運動の振幅が時間とともに増大し、やがて極大値に達します。

(※4)「SQUID」
大阪大学D3センターが設置し、2021年5月から運用されている計算機。

(※5)「HOKUSAI BigWaterfall2」
理化学研究所 情報セキュリティ・システム部が設置し、2023年12月から運用されている計算機。

(※6)トルク
回転軸から力がはたらく点までの距離と、その点にかかる力との積で表される量です。流体中を回転するローターには、流体の抵抗や浮力によりトルクがはたらきます。ローターをより速く回転させると、ローターにはより大きなトルクが作用します。トルクに角速度(単位時間あたりに回転する角度、つまり回転の速さ)をかけたものは動力と呼ばれます。エネルギーの釣り合いから、ローターが回転し続けるとき、その動力の時間平均値は、単位時間あたりのエネルギー損失に等しくなります。これは、流体の持つエネルギーを失う分だけ、それを補うための動力が必要になることを表します。

(※7)攪拌損失
回転ローターや羽根車などで流体をかき混ぜる際に、流体の持つエネルギーの一部が熱エネルギーに転換されます。この転換分(エネルギー損失)を攪拌損失と呼びます。

Last Update : 2026/01/23